※当サイトではアフィリエイト広告を利用しています

脚本の書き方

1時間ドラマってどう書く?脚本の分量・構成・応募のコツを解説

「1時間ドラマってどう書くの?」

「1時間ドラマの書き方の見本はある?」

創作テレビドラマ大賞、フジテレビヤングシナリオ大賞、日本テレビドラマシナリオ大賞、テレビ朝日新人シナリオ大賞など、テレビドラマのシナリオコンクールでは、1時間ドラマの脚本で応募するケースがほとんどです。
とはいえ、1時間の単発ドラマを見る機会が少ないため、「1時間ドラマって、どう書けばいいの?」と疑問を抱く方も多いでしょう。
そこでこの記事では、1時間ドラマの脚本の書き方について解説します。
分量や基本的なフォーマット、執筆のコツ、またコンクール入選に向けて押さえておきたいポイントについても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

1時間ドラマの基本フォーマットとは?

原稿用紙400字×50~60枚程度で書く

1時間ドラマの脚本は、原稿用紙400字詰めで約60枚が目安です。
ただし、「1時間ドラマ」といっても、実際にはCM放映時間を含むため、正味の放送時間は50分程度となるのが一般的です。そのため、制作現場で「1時間ドラマ」と言いつつも、正味50分を想定し、400字詰め原稿用紙で50~55枚に収めるのが通例です。

シナリオコンクールでも、1時間ドラマの課題は「400字×50~55枚」といった指定になっているケースがほとんどです。

表紙1枚・登場人物表1~2枚・本文50~55枚

1時間ドラマの脚本は通常、「表紙1枚」「登場人物表1~2枚」「本文50~55枚」で構成されます。シナリオコンクールでは、これに加えて、「あらすじ1~2枚」の提出が求められるケースがほとんどです。

「表紙」「登場人物表」「本文」の具体的な書式については、下記の記事を参考にしてください。
3分で読破!「脚本・シナリオの書き方」(書式・ルール編) - 創作の道具箱~物語作りのお役立ち情報~

1時間ドラマの書き方

「1時間ドラマのストーリーって、どう作ればいいの?」という方に向けて、書き方の手順の一例を紹介します。

1)ドラマの“タネ”を見つける

「悲恋を描きたい」「面白い弁護士を描きたい」「町を再生する話を描きたい」など、まずは、自分が描きたいドラマの“タネ”を見つけましょう

人でも事件でも世界観でも構いません。あなたが、長く深く関心を持ち続けられる素材がいいでしょう。その着想を出発点として、ドラマを構築していきます。

ただし、1時間ドラマの場合、「女の一生」や「世界大戦」などスケールの大きすぎる題材は描き切れないため注意が必要です。

特にシナリオコンクールでは、「人間が描けているか」が評価のポイントとなります。描く期間が長すぎたり、登場人物が多すぎたりすると人物描写が薄くなり、不利になる傾向があります。

人物描写を深めるためにも、期間や登場人物が絞れる素材がおすすめです。限られた時間で、主人公をじっくり描いてみせる必要があるため、「主人公と副主人公の2人を軸に展開できるもの」で、「数日~数週間程度の時間軸」で進められる題材が向いています。

2)ドラマの“タネ”を1~3行のログラインに落とし込む

ドラマの“タネ”を見つけたら、それをもとに空想を広げ、「どんなドラマにしたいか」を、ログラインで表してみましょう。

ログラインとは、ドラマや映画、物語の見どころを、1~3行で簡潔に表したものです。

例えば、以下のようなログラインがあります。

Netflix「地面師たち」(原作:新庄耕、監督・脚本:大根仁)
土地をめぐる詐欺のプロ集団「地面師」たちが、不動産のプロでもある大手デベロッパーを相手に、100億円規模の詐欺を仕掛け、成功する話。

NHK「あんぱん」(脚本:中園ミホ)
何者でもなかった若い夫婦が、戦争や貧困、挫折を乗り越えながら、「逆転しない正義」を体現する大人気漫画「アンパンマン」を生み出す話

上記は連続ドラマのログラインなので、スケールがやや大きめですが、1時間ドラマの場合には、以下のような例があります。

NHK「火の魚」(脚本:渡辺あや)
死を垣間見たことから、かつてのような勢いある作品が書けなくなった老作家。そこへ、ある女性編集者が現れる。意固地な老作家は彼女に嫌がらせをするが、やがて彼女の秘密と胸に秘めた思いを知り、心を通わせていく。

NHK「お買い物」(脚本:前田司郎)
田舎で穏やかに暮らす老夫婦。かつてカメラを愛した夫のもとに、東京で開催される古カメラ見本市のダイレクトメールが届く。会場は賑やかすぎて怖いほどの渋谷。脚力にも不安がある中、それでも昔のカメラをどうしても見たいという思いから、夫婦は東京行きを決意し、旅に出る――。

これら2作はいずれも、心に響く名作ドラマです。
ログラインからも分かるように、波乱万丈な事件が起こるタイプの物語ではなく、ごく日常の延長上にあるような内容です。1時間は、こうした素材がちょうどよいといえるでしょう。

まずは難しく考えず、「誰が」「何をする」ドラマを書きたいのか文章にしてみましょう。
ログラインにするには「主人公」「時代」「場所」「テイスト」といったイメージを定めることが大切です。
ログラインとは、いわば、その作品の”売り”です。
ハリウッド映画でも、ヒット作には強い惹きのあるログラインがあると言われています。「どうしてそんな人にそんな偉業が達成できるのか」「どうやって成し遂げたのか」という驚きや興味を引き出すために、「誰が」「何をする」の部分に脚色を加えてみましょう。

ログラインは、あなたの作品の魅力を凝縮したものです。執筆中に行き詰まったときには、立ち返る”軸”にもなるので、しっかりと見定めておきましょう。

ログラインについて詳しくは下記の記事も参考にしてください。
ログラインとは?書き方と名作映画のログラインを一覧で紹介

3)登場人物を考える

主人公、副主人公、宿敵など、登場人物を考えていきましょう。

ドラマとは「人間を描くこと」といわれます。人物描写が浅くならないよう、「誰と誰の物語なのか」を明確にし、登場人物は必要最低限に絞るのがポイントです。

まず、主人公と副主人公をはっきりと設定し、その二人の対立や関係性を軸に物語を展開させましょう。

登場人物を増やしすぎると、それぞれの役割があいまいとなり、説明的なセリフや意味のない冗長なシーンが増えます。結果として、ドラマが浅くなる傾向があるので注意しましょう。

登場人物表には名前と年齢と職業・家族関係のみを書きますが、それ以外にも「どんな見た目か」「どういう性格か」「どんなトラウマを抱えているか」など、深く掘り下げていきましょう。作家の中には、登場人物の詳細な履歴書や住まいの間取り図まで作り込む方もいるほど、この人物造形は重要です。

ここで作り上げた人物像によって、物語の中で与えられる障害への乗り越え方が変わり、ストーリー展開にも影響を与えます。人物造形がうまくできていれば、執筆中に「登場人物が勝手に動き出す」感覚になることもあります。ドラマの核となる部分ですので、じっくりと向き合いましょう。

主人公については、誰もが共感できる短所や欠点と、「これはかなわない」という憧れの要素や長所の両面を盛り込むのがコツです。ぜひ参考にしてください。

4)プロットを書いてみる

次にプロットを書いてみましょう。

プロットとは、これから描くドラマの流れをまとめたメモのようなものです。あらすじの詳細版ともいえるでしょう。

脚本にする前に、想定している物語の筋や骨子を、自由に書き連ねてみましょう。プロットを作ることで、構想を練る助けになるだけでなく、ストーリー展開の矛盾や要素の不足にも気づきやすくなります。

「プロットにするほどストーリーが思い浮かばない」場合は、まず主人公にこのドラマで達成すべきゴールを与えましょう。そして、そのゴールに至る道筋に、反対する人物や金銭的事情などの障害を次々と設け、それを乗り越えさせていく形にするのも一つの手です。そうすることで、自然と主人公のキャラクターを行動で描写できるようにもなります。

プロットを書き進める中で、キャラクター・人物造形が深まったり、見直したりすることも少なくありません。

プロットの書き方については、下記の記事も参考にしてください。
プロットの書き方|小説や脚本を書くためにマスターしたい活用法を紹介 - 創作の道具箱~物語作りのお役立ち情報~

5)プロットを人に見せて意見をもらって直す

プロットが完成すれば、できれば、人に見せて感想をもらい、必要に応じて修正・補強していきましょう

プロットを人に見せるのは、客観的な評価を得て、作者自身では気づきにくい問題点を発見するためです。
プロの作家でも、自分の意図がうまく表現できていない、伝わっていなかったりすることはよくあります。
人の意見を全て聞き入れる必要はありませんが、客観的な視点にさらすことは、作品の完成度を高めるうえで、大切なプロセスです。

フィードバックは誰もが得意とは限りません。シナリオを一緒に学んでいる仲間や、メンターがいる場合は、その人に依頼するのが効果的です。フィードバックをもらったら感謝の気持ちを忘れずに受け止めつつ、全て鵜呑みにするのではなく、自分の作品がよりよくなると感じた部分を取捨選択して受け入れ、改善していきましょう。

また、時間をおいて見直すことも、客観的な視点で作品を見返すのに役立ちます。

6)脚本に起こす

プロットができたら、脚本に起こしていきましょう。

ドラマの脚本は、登場人物の思いを”行動”で表現する必要があります。例えば、プロットで「二人は恋に落ちた」と表現していたとしても、脚本ではそのまま書くわけにはいきません。

二人がどの瞬間に恋に落ちたのか、行動の流れやきっかけとなる瞬間を、具体的なシーンとして描写していく脚本化という作業です。

プロットの内容を、具体的にどういう映像で描いていくかイメージしてから、脚本の書式のルールに沿って言葉にしていくようにしましょう。

脚本の書き方については、下記の記事も参考にしてください。
3分で読破!「脚本・シナリオの書き方」(書式・ルール編)
3分で読破!「脚本・シナリオの書き方」(内容・創作編)

1時間ドラマの書き方についてのFAQ

1時間のテレビドラマのシナリオ見本はありますか?

1時間の単発ドラマが放映されることは少ないため、まずは、シナリオコンクールの受賞作品を参考にするのがよいでしょう。

シナリオコンクール受賞作品は、雑誌「月刊ドラマ」や「シナリオ教室」などで読むことができます。
「月刊ドラマ」バックナンバー
「月刊シナリオ教室」バックナンバー

1時間のテレビドラマってどこで見られますか?

プロの作品が見たい場合は、NHKアーカイブスで、単発のドラマ(地域発のドラマや特集ドラマ)を検索するといくつか見つかります。参考にしてください。
例)
広島発ドラマ 火の魚|番組|NHKアーカイブス
長崎発地域ドラマ かんざらしに恋して|番組|NHKアーカイブス
特集ドラマ お買い物|番組|NHKアーカイブス

1時間ドラマは、一話完結の連続ドラマを参考にしてもいい?

刑事ドラマ、弁護士ドラマ、医療ドラマなどの一話完結型の連続ドラマを参考にするのも一つの方法ですが、いくつか注意点があります。

  • 通常の単発ドラマに比べて、主人公の1話あたりの変化や成長が小さい
  • 登場人物が多く、人物描写が分散しやすい

1話完結の事件物の場合、ゲストキャラクター(犯人や患者など)の抱える問題とその解決の流れの”サイズ感”を素材選びのヒントにするとよいでしょう。ただし、ゲスト役はあくまで脇役であり、描写が深く掘り下げられていないことも多いため、その点には注意が必要です。

まとめ

1時間ドラマの書き方について紹介しましたが、実際に書くとなると、まず「1時間ドラマではどれくらいの内容が描けるのか」というサイズ感を把握することが、大きなハードルになるかもしれません。サイズ感をつかむには、上記で紹介した1時間ドラマなどを実際に視聴してみるか、小説でいうなら長編でなく短編小説を参考にするとよいでしょう。あとは、あまり構えずに、とにかく書き進めてみて、何枚でどれくらいのことが描けるのかを、実践で学んでいくことがおすすめです。

-脚本の書き方