※当サイトではアフィリエイト広告を利用しています

書評 脚本の書き方

シド・フィールドの脚本術|著書「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」を紹介

脚本を学んでいる人であれば、シド・フィールドという名前を耳にすることもあるのではないでしょうか?

シド・フィールドは、アメリカはロサンゼルス出身で、1970年代から「ゴッドファーザー」「アリスの恋」「アメリカン・グラフィティ」などに関わり国際的評価を受けている脚本家です。

脚本家として活躍する一方で、ハリウッド式の脚本メソッド「三幕構成」理論を体系化したことでも知られ、その著書「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」(シド・フィールド著/フィルムアート社)は世界的ベストセラーとなっています。

この「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」は脚本を学ぶうえで必見の教本といえます。この本に掲載の脚本術を知っているか知っていないかで、脚本のクオリティや書き方がかなり変わってくるといえるでしょう。

ここでは、その「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」で解説されているシド・フィールドの脚本術の内容と、本書の必見ポイントについて紹介します。

よりよい脚本を書きたいと思っている人はぜひ参考にしてみてください。

著者のシド・フィールドってどんな人?

著者のシド・フィールドの経歴を紹介します。

シド・フィールド(Syd Field, 1935年12月19日 - 2013年11月17日)】
アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス・ハリウッド出身の脚本家、プロデューサー。「ゴッドファーザー」「アリスの恋」「アメリカン・グラフィティ」などの製作に関わり脚本家として国際的評価を受ける。脚本家として活躍する一方で、ハリウッド式の脚本メソッド「三幕構成」理論を体系化したことで知られる。
著著「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」は、22ヵ国語に翻訳され、全米400以上の学校でテキストとして使用されている。

シド・フィールドは、1970年代からハリウッド映画の脚本家として活躍し、世界的に評価された脚本家です。

ハリウッドで活躍する中で、名作に共通する脚本の枠組み、脚本の技術を体系化しシド・フィールドの脚本術として著書(「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」)にまとめました。

その著書は、今では全世界22カ国で「脚本の教科書」として活用されています。

シド・フィールドの門下生には、ジェームズキャメロン(「ターミネーター」「タイタニック」)、テッド・タリー(「羊たちの沈黙」、キュアロン兄弟(「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」)などがいます。現在世界的に活躍している映画監督・脚本家も学んでいることからも、シド・フィールドの脚本術の信頼度の高さがうかがえます。

「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」とは

「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」(シド・フィールド著/フィルムアート社)は、シド・フィールドの脚本術を記した本として最も知られている本です.

シド・フィールドの脚本術といえば、脚本の構成である「三幕構成」についての話が有名ですが、本書には、三幕構成だけでなく、登場人物の創作法、三幕構成からシーンの構築まで、脚本を1本作り上げるために必要な脚本術が詳しく解説されています。

本書で解説されている点は次のような点です。

  • 主題(テーマ)を作る
  • 登場人物を「創造」する
  • 登場人物を「構築」する
  • ストーリーの作り方
  • シーンの作り方
  • シークエンス(目的を持ったシーンのかたまり)を考える

「何について、誰についての脚本か」を明確にすることからスタートし、そこから実際の映像脚本を編み上げるまでのプロセスを、実際の名作映画の事例を参考にしながら学ぶことができます。

シド・フィールドの三幕構成とは

ここでは、シド・フィールドの脚本術で特に注目される「三幕構成」について簡単に紹介します。

シド・フィールドは、「よい脚本は三幕構成といったパラダイム(枠組み)を持っている」としています。

よい脚本は、パラダイム通りに書かれてある。しかし、よく組み立てられ、パラダイムに合っているということで、よい脚本やすばらしい映画が生まれるわけではない。パラダイムは一つの形であるが、公式ではない。構成は、ストーリーを一つにまとめるだけのものなのだ。

出典:「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」

ここでいう「パラダイム」とは、基本の「型」のことです。例えば、コートやジャケットの「パラダイム」は二つの腕と前と後ろの生地のようなものだとシド・フィールドは解説しています。それに対して、「公式」とは、例えば工場でその通りにやれば、同じ素材同じ色の同じコートをいくらでも作ることができるというものだと。

つまりパラダイムとは、あくまで「型」で、その通りにやれば必ず名品ができるとは限らないものとしています。とはいえ、よい脚本というものは、三幕構成という「脚本のパラダイム」=「脚本の基本の型」を踏まえているため、脚本を書く際には三幕構成を意識すべきといえます。

下記は、シド・フィールドの三幕構成を図示したものです。

基本的に、脚本で描かれるストーリーでは、オープニングのA地点からエンディングのZ地点まで、主人公が目標を持って突き進みます
その過程は、

  • 第一幕:ストーリーの発端。状況設定が描かれる。
  • 第二幕:ストーリーの中盤。主人公の目的に対してさまざまな障害が起こり、主人公の葛藤が描かれる。
  • 第三幕:ストーリーの結末。主人公が目的を達成するための解決シーンが描かれる。

の三幕の展開で描かれます。

また、第一幕から第二幕、また第二幕から第三幕にそれぞれ進展する際に、「プロットポイント」といわれる転換シーンが必ずあるとされています。

  • プロットポイントⅠは、ストーリーが本題に入る転換点です。第一幕から第二幕へ転ずるきっかけとなる出来事が描かれます。
  • プロットポイントⅡは、ストーリーが解決に向かう転換点です。第二幕から第三幕へ転ずるきっかけとなる出来事が描かれます。

例えば「テルマ&ルイーズ」という作品での解説では、次のように第一幕、第二幕、第三幕、プロットポイントが紹介されています。

「テルマ&ルイーズ」(1991年、アメリカ映画)
<あらすじ>
平凡な主婦テルマが、友人のウェイトレス、ルイーズと共にドライブに出かける。途中のドライブインで、テルマが見知らぬ男たちにレイプされそうになり、ルイーズは男たちを射殺してしまう。二人はそのまま車でメキシコへと逃亡することになり、盗みの被害に合ったり強盗をしたりしながら逃げ続ける。しかしとうとう警察に追いつかれ、2人は乗っていた車のスピードをあげ、崖から飛び出す。車は宙を舞い、テルマとルイーズは自由を手に入れた。
<第一幕>
平凡な主婦のテルマは少し不器用な性格で、横柄で身勝手な夫に虐げられている。ウエイトレスのルイーズは、テキパキとした性格だがミュージシャンである恋人のジミーが近頃ルイーズに見向きもしないことにイラ立ちを覚えている。二人はそんな日常から解き放たれて、週末旅行に行くことにする。
>>>プロットポイントⅠ
旅行に出た途端に、テルマがバーで知り合った男に絡まれレイプされそうになり、ルイーズが男を射殺してしまう。
<第二幕>
殺人事件を起こしてしまったテルマとルイーズは逃げることにする。法から逃れるようにメキシコへ。
>>>プロットポイントⅡ
ユタのモニュメントバレーを通りかかり、広大な自然の中で、テルマはルイーズに「ありがとう」と告げる。もうやり直しができないことを静かに覚悟する2人。
<第三幕>
警察車両がテルマとルイーズを追いつめる。二人は車ごと崖に向かって飛び込む。

以上が三幕構成の簡単な概要です。

本書では、構成だけでなく、この構成からどうやってシーンを組み立てていくか、登場人物や事件をどうやって作っていくかということも詳しく解説されています。

名作といわれる脚本がどのように構築されているか、実際の映画の実例で考察することができるため、とても実用的で役立つ本といえます。

シド・フィールドの脚本術はシナリオコンクール前にマスターしておくことがおすすめ

本書は、事例に挙がる映画を見ていない場合は解説がピンとこなかったり、長文のため読みにくかったりするため、なかなか初心者で読破している人は少ないといえます。しかし、できれば、シナリオコンクールに作品を出す前に読破し、理解しておくことをおすすめします。

というのも、シナリオコンクールに出す作品で多くの人が侵しがちな下記のような失敗も、このシド・フィールドの脚本術を押さえておくことで避けられるからです。

<シナリオコンクールで指摘されがちな失敗点>
・ストーリーが単調である
・ドラマがない
・人間が描かれていない
・主人公の登場が遅い
・何を伝えたいのかわからない
・登場人物が多すぎる
……など

これらの失敗は、シド・フィールドの脚本術で、登場人物と事件のあり方、登場人物とストーリーのあり方、三幕構成とシーンの作り方を学ぶことで、避けやすくなります。

これらの失敗を避けるだけで、コンクールでは多くの人と差をつけることが可能です。

シド・フィールドの脚本術はシリーズ2冊目から読むことがおすすめ

シド・フィールドの脚本術は、現在3冊のシリーズで発行されており、おすすめは、シリーズ2冊目から読むことです。

シド・フィールドの脚本術のシリーズ3作は下記の通りです。2作目はワークブック、3作目は上級者向けの解説書となっています。

「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」は脚本を学ぶ人にはおすすめですが、少し前の時代の本のためか、文章も長く構成も読みづらいことが難点といえます。

2作目の「素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2」は練習問題付きのため、実際に手や頭を動かしながら学ぶことができます。また、文章もシリーズ1作目と比較して読みやすくなっています。このため、2作目のワークブックをマスターしてから1作目を読んだ方が、読みやすく内容も頭に入りやすくなります。

シド・フィールドの脚本術はシリーズ2冊目から読むことが、読みやすく学びやすいため、おすすめです。

シド・フィールドの脚本術で解説される名作映画は必見!

シド・フィールドの脚本術では、実際の多くの名作映画を例に挙げて解説されています。このため、紹介される名作映画を見ていないと、解説を読んでもよく理解できないことに注意が必要です。

少し前の時代の本のため、本書に出てくる作品を見ていない人も多いとは思いますが、ぜひ見ておくことをおすすめします。

チャイナタウン
市民ケーン
アメリカン・ビューティ
テルマ&ルイーズ
マトリックス
パルプ・フィクション
ロード・オブ・ザリング
ショーシャンクの空に
明日に向かって撃て
シービスケット
……など

特に、「チャイナタウン」は、名作中の名作として本書で何度も事例に挙がるため、本書を読む前に見ておいた方がいい作品といえます。

まとめ

シド・フィールドの脚本術についての著書「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」について紹介しました。

書かれていることは脚本を書く上で大切なことですが、この脚本術を身に付けることはなかなか簡単ではないといえるでしょう。とにかく、このシド・フィールドの脚本術の視点で多くの作品を見て分析したり、実際に脚本を書いてみたりして、実践するしかありません。

2作目のワークブックを活用するなどして、とにかく読むだけに終わらず、実行に移すようにしていきましょう!

-書評, 脚本の書き方