前回の映画「スポットライト 世紀のスクープ」の第一幕の分析の続きです。
第一幕のセットアップでは主要キャラクターが効果的に紹介されます。「スポットライト」は登場人物が多いのですが、見事にそれぞれの性格や事情、背景が描き分けられているため、思わず惹きつけられてしまいます。
第一幕(Setup)登場人物のキャラクター紹介
前回解説したとおり、最初の20分は、この映画の設定説明(セットアップ)です。
ここで、本作品のテーマと主要人物が紹介されます。
印象的なファーストシーンから時は変わって、舞台は2001年7月のボストン・グローブ社。
まだ「教会の大スキャンダル」に気づく前です。
とにかく登場人物が多いのですが、それぞれに特徴づけがされています。
押さえておいた方がいい人物を、スクリプトで見ていきます。
社会派コラム欄「スポットライト」の5人の記者たち
1)ロビー:スポットライトのデスク
まずはト書きから…
WALTER ‘ROBBY’ ROBINSON, 55, Boston Everyman
引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」
ウォルター“ロビー”ロビンソン 55歳、ボストンのどこにでもいる普通の人
セリフから…
MARTY
So, you’re an editor for, uh, the Spotlight team?
君はスポットライト欄のデスク?引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から
ROBBY
I prefer to think of myself as more of a player-coach. But yes.
自分では選手兼任監督と.
このロビーがスポットライトチームのデスク。部下とも上司とも親しいし、ポーカーもゴルフもうまいし、友人も多いし、仕事もできて人望もある感じに描かれています。
人物が多すぎて、最初は誰が主人公かよくわからないのですが、だんだんこのロビーが主人公とわかってきます。
2)マイク:スポットライトチームの記者
登場シーンから電話に向かって吠えていて、血気盛んな印象。
MIKE REZENDES, late 30s,good looks, so-so haircut, sits at his UNHOLY MESS of a desk.
引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」
マイク・レゼンデス、30代後半、見た目はよし、まあまあの髪型、席はかなり散らかっている
確かに、勢いはあるが、少々、がさつな感じ。
3)サーシャ:スポットライトチームの紅一点記者
ト書きには…
SACHA PFEIFFER, 28, wholesome, no bullshit
引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」
サーシャ・ファイファー、28歳、健康的でちゃんとしている
「Sacha checks messages at a tidy desk, full of books.」とも書かれていて、確かに机もキチンとしていて、本も多いし、まじめな感じ。
4)マット:スポットライトチームのパパさん記者
MATT CARROLL,mid 40s, mustache, family man
引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」
マット・キャロル、40代半ば、口ひげ、家庭のある男
「家族思いのやさしいお父さん」といった感じ。「Matt sets the cake by Mike, sits at a desk full of FAMILY PHOTOS」ともあって、デスクに家族写真を飾るなどの演出がなされている。
5.ベン:ボストン・グローブ紙の編集長
BEN BRADLEE JR., 50s, gruff
引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」
ベン・ブラッドリー・Jr.50代、荒々しい感じ。
実際に演じているジョン・スラッテリーは、荒々しい印象というより温和な感じに見えます。
ト書き上、”Everyman”となっていたロビーの方が、個性があって熱量が高いように感じます。
ベンが、スポットライト欄のデスクのロビーの上司で、ボストングローブ紙の編集長です。
このロビー、マイク、サーシャ、マット、ベンの5人と、後述するマーティ新局長が活躍します。
最初のミッションは、ただ一人の神父の虐待問題の追及だった
もう一人のボストングローブ紙のキーマン。
親会社のタイムズ紙から、新局長に就任したマーティ・バロン。
グローブ紙の記者たちは「マイアミからコストカットに来たのか?」と警戒するが……
その新局長は、第一回目の編集会議で、皆を驚かせます。
「カトリック教会が隠ぺいするゲーガン神父の児童性的虐待問題を掘り下げるべきだ」といきなり言い出すのです。
この件は、かつてコラムで2記事ほど取り上げられてそれきりでした。
これに対して、ベンをはじめとする編集者たちは難色を示します。
「でも、被害者代理人の弁護士は変な奴だし、だいたい教会はその事実を認めていない」と。神父の虐待そのものを、あまり信じてないのです。
ですが、「かたくなに証拠があると、その被害者側の弁護士は訴えているじゃないか」とマーティ。
MARTY
Well, apparently this priest molested kids in six different
parishes over the last thirty years
and the attorney for the victims,
Mr…
この神父は6つの教区で30年間、虐待を繰り返している。
そう被害者側の弁護士の……
EILEEN(←記者の一人)
Garabedian.
ガラベディアン
MARTY
Thanks, Eileen. Mr. Garabedian says
Cardinal Law found out about it
fifteen years ago and did nothing.
ありがとう、エレン。
ガラベディアンによればロウ枢機卿は15年前から知っていたのに何もしなかった。引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から
CANELLOS(←記者の一人)
I think that attorney’s a bit of a
crank. And the Church dismissed the claim.
弁護士が変わり者で教会は全面否定している。
最初に事件を訴えていた弁護士はすっかり変人扱い……。
マーティ新局長は「ガラベディアン弁護士は、枢機卿が事件を黙殺した証拠があると言っている。真実を掘り下げるべきだ」と説く。
それに対して、ベンは「証拠は封印されている」と反論。
マーティは、「裁判所に訴えて封印を解除すればいい」とさらに反論。
すると「教会を訴えるっていうんですか!?」とベンたち一同は驚く。
MARTY
This strikes me as an essential
story for a local paper. At the
very least, we should be going after
those documents.
もっと掘り下げるべきだ(これは地元紙にとって重要な問題だと思う)。
少なくとも証拠を手に入れたい。
CANELLOS
How would you like to do that?
どうやって?
MARTY
Well, I don’t know what the laws are
here, but in Florida we would go to
court.
ここの法律はよく知らないが、フロリダなら、裁判所に訴える。
Robby raises an eyebrow. In fact, the whole room does.(←ト書き)
ロビーは驚いた(眉をあげた)。実際、部屋全体が驚いていた。BEN
You want to sue the church?
教会を訴えたいんですか?
MARTY
Technically we wouldn’t sue the
Church. We would file a motion to
lift the seal on those documents.
いや、裁判所に封印解除の申し立てをする。
(専門的には教会を訴えるのではない。封印解除の申立書を出すんだ)
BEN
The church will read that as us
suing them. So will everybody else.
教会を訴えるも同然です。誰もがそう思う。引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から
MARTY
Good to know.
なるほど
ということで、神父の性的虐待の証拠を手に入れるべく動き出す。
結局、それらの担当者として、ロビーたち「スポットライト」チームに白羽の矢が立ち、彼らが事件を追うことになりました。
(続く)