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映画分析 英語でシナリオ

映画「スポットライト」脚本分析(3)淡々とした流れの中の激しい戦い

前回までに、映画「スポットライト 世紀のスクープ」の第一幕のセットアップについて分析しました。ここでは第二幕の解説です。

映画の第二幕では主人公の葛藤や対決が見られるところです。第二幕の葛藤や対決が弱いと物語が誰てつまらなくなります。葛藤や対決を強めるためには、何も派手なアクションシーンが必要なわけではありません。

映画「スポットライト」には派手なアクションシーンなどはありませんが、淡々としたリアルな人々のやり取りの中で激しい戦いを繰り広げています。それでは下記に見ていきましょう。

第二幕(中盤)「葛藤」の展開

第一幕は「状況設定」の説明で、第二幕からはいよいよ、中盤の「葛藤」段階です。
(映画は大体、第一幕:セットアップ、第二幕:対決・展開、第三幕:解決の三部構成)

ここでは、取り組むべき課題と戦いの展開が描かれます。

いよいよスポットライトチームが、神父の性的虐待問題に向き合っていきます。

スタートから、ささいな障害がいろいろとあります。

チームメンバーのマイクは、性的虐待の証拠を握っているとする弁護士のガラベディアン(GARABEDIAN)に話を聞こうとしますが、一筋縄ではいきません。

ガラベディアンは誰よりも被害者のために働いているのですが、教会から目を付けられ、弁護士資格をはく奪されそうになったりと、厳しい道を歩んでいます。
マイクが「被害者と話がしたい」といっても、警戒して、なかなかまともに受けあってくれません。

そんななか、スポットライトチームは、被害者団体SNAPの代表で自身も被害者の、フィル・サヴィアノ(Phil Saviano)という男性に会うことにします。が、そのサヴィアノは、グローブ紙の記者の間でも、「サヴィアノは厄介だ。虐待の件は、過去に二度ほど記事にしたのに、しつこい。あいつは教会と戦争を起こしたいんだ」と揶揄され、変人扱いされています。

ですが、そのサヴィアノはスポットライトチームに、こう訴えます。

SAVIANO(サヴィアノ)
See, it’s important to understand that this is not just physical
abuse, it’s spiritual abuse too.
When priest does this to you, he robs you of your faith.
重要なのは、これは肉体だけでなく精神への虐待だということだ。
神父に虐待されて、信仰まで奪われてしまうんだ。

~(中略)~

SAVIANO (CONT’D)
You guys gotta understand, this is big. It’s not just Boston, it’s the
whole country, the whole world. And it goes right up to the Vatican.
あなたたちは何も理解していない。
これは大きなことだ。ボストンだけの話じゃない。
全国全世界で起きている。バチカンが黒幕なんだ。

~(中略)~

SAVIANO(CONT’D)
Priests! I know of thirteen right here in Boston.
神父だ。ボストンには13人もいるんだ。

ROBBY(ロビー)
You know of thirteen priests who have molested children in Boston?
ボストンの13人もの神父が子どもたちにいたずらをしたって?

SAVIANO
Yeah. Why do you keep repeating everything I say?
そうだよ。何度言わせるんだ。

引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Siger & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から

【単語】abuse:虐待、悪用、(CONT’D):続き molest:性的ないたずらをする

サヴィアノの「ボストンの13人もの神父が子どもたちを性的虐待をしてきた」という言葉に愕然とする一同。

まだ半信半疑の様子だが、早速、サヴィアノの紹介で被害者の取材へと動き出す。すると確かに、性的虐待をしていたのはゲーガン神父だけでなく13人いる模様だ。

どんどん増える虐待神父の数

そうするうちに、元聖職者で療養施設に勤めていた、リチャード・サイプ(Richard Sipe.)という男性が取材に応じてくれる。
サイプの勤めていた療養施設は、性的虐待の問題のある神父が送られていた施設。そこでサイプは30年間、性的虐待の神父と被害者のことを調べていた。

そのサイプは言う。「聖職者の6%が小児性愛者だ。ボストンでは90人はいるはずだ」と。

ROBBY
Richard, Robby here. We think we have thirteen priests in Boston that
fit this pattern, which would be a very big story.
Does that sound right to you? In terms of scale?
リチャードさん、ロビーです。我々は虐待容疑の神父を
ボストンで13人見つけた。大きな事件だ。
その数字は正しいと思いますか?

SIPE (ON SPEAKERPHONE)
No. Not really. It sounds low. My estimates suggest six percent
act out sexually with minors.
いいやロビー。それは小さい。
私の予想では6%が小児性愛者だ。

MIKE
Six percent of what?
何の6%です?

SIPE (ON SPEAKERPHONE)
Six percent of all priests.
Holy shit. Robby turns to the team.
神父全体の6%だ

ROBBY
How many priests do we have in Boston?
ボストンでは?

MATT
About fifteen hundred. One percent
is fifteen… six percent is ninety.
全部で1500人だから1%は15人、……6%は90人

ROBBY
Ninety priests?
90人?

SACHA
Is that possible?
可能性は?

SIPE (ON SPEAKERPHONE)

From a metric standpoint, that would be in line with my findings.
統計的に言えば、私が調査した結果と大体一致する。

The team looks at each other.(チームは顔を見合わせる)

引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から

「13人でなくて90人もだと!?」と驚く一同が、神父の年鑑で、ゲーガン神父と同様に不自然な異動をさせられている神父の数を数え上げてみると、87人という数字になった。

もはや個々の神父の問題ではない。教会組織の問題だ。

子どもたちを虐待している神父の数が、90人にもなる計算。
それを局長のマーティに報告すると、マーティは、「これはもはや、個々の神父の問題ではない。組織の問題だ」という。

「すぐにでもこの変態神父のことを報道しよう!」というマイクを抑えて、マーティは「それではダメだ」と諭す。

MARTY
We’ll get into the same cat fight you got into on Porter, which made a
lot of noise but changed things not one bit. We need to focus on the
institution not the individual priests. Practice and policy. Show
me the Church manipulated the system so that these guys wouldn’t have to
face charges. Show me they put those same priests back into parishes,
time and time again. Show me this was systemic, that it came from the top down.
ポーター事件の時と同じで大騒ぎにはなるが、何も変えることはできない。
組織に焦点を絞ろう。個々の神父じゃなく。熱意と用心深さで。
教会の隠蔽システムを暴け。

教会が同じ神父を何度も転属させ、それが上の指示で行われていることを。

引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から

「個々の神父でなく、教会の隠蔽システムを暴け!」と言われたスポットライトチーム。事態の深刻さを受けて、再び動き出す。

(続く)

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