公開から20年が経った今も、その面白さがまったく色あせない『プラダを着た悪魔』。
その続編『プラダを着た悪魔2』が2026年5月に公開予定で、すでに“前作を超える名脚本”との声もあります。公開が待ち遠しいところですが、そのまえに、あらためて前作を振り返ってみました。
本記事では、『プラダを着た悪魔』のあらすじや名シーン、そして物語を支える三幕構成について紹介します。
脚本や小説づくりを学んでいる方にとっても、『プラダを着た悪魔』のログラインやキャラクター造形、構成分析は創作の大きなヒントになるのでぜひ目を通してみてください。
「プラダを着た悪魔」のあらすじと基本情報
まず、映画『プラダを着た悪魔』のあらすじを振り返ってみましょう。
舞台は、2006年のNYです。
【『プラダを着た悪魔』あらすじ】
ジャーナリスト志望のアンディ(アン・ハサウェイ)。
ファッションセンスゼロでファッションにも興味がないが、ひょんなことから一流ファッション誌「ランウェイ」で編集長のアシスタントとして働くこととなる。
その「ランウェイ」の編集長であるミランダ(メリル・ストリープ)は、発言ひとつでファッション界のトレンドを左右するといわれるカリスマ。何百万人もの人がミランダのもとで働きたがる一方、“鬼編集長”としても知られ、アシスタントに課す要求は常に無理難題。ミランダの一言で首になる者も後を絶たない。
当初はファッションを軽視していたアンディだが、ミランダのもとで働くうちに、自分の甘さや仕事の厳しさを痛感し、次第に難しい仕事もスマートにこなせるほど成長していく。
やがてミランダにも認められる存在となり、アンディはファッションの世界にのめり込んでいく。しかし、仕事が順調になるほど、恋人ネイトや友人たちとの関係はすれ違い、ジャーナリストという本来の夢からも遠ざかっていく。さらに、仕事のためなら仲間のナイジェル(スタンリー・トゥッチ)をも切り捨てるミランダから「あなたと私は似ている」と告げられ、アンディは自分が望んだ道から大きく逸れていることに気付く。
そして彼女はミランダのもとを離れ、ジャーナリストとしての道を歩み始めるのだった。
【『プラダを着た悪魔』基本情報】
2006年アメリカ製作/110分
原題:The Devil Wears Prada
配給:20世紀フォックス映画
劇場公開日:2006年11月18日
監督:デビッド・フランケル
製作:ウェンディ・フィネルマン
製作総指揮:カレン・ローゼンフェルト ジョー・カラッシオロ・Jr.
原作: ローレン・ワイズバーガー
脚本: デヴィッド・フランケル、 アライン・ブロッシュ・マッケンナ
キャスト:アン・ハサウェイ、メリル・ストリープ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチ
「プラダを着た悪魔」のキャラクター/キャスト
20年後の姿を描く『プラダを着た悪魔2』においても、奇跡的にルックスがあまり変わらないメインキャストが、次の4人です。
アンドレア・サックス(アン・ハサウェイ)
ジャーナリスト志望でファッションに全く興味がなかったが、「ミランダのもとで1年働けば、どんな仕事にもつける」と聞き、1年だけのつもりでアシスタントを引き受ける。
ミランダ・プリーストリー(メリル・ストリープ)
ファッション誌「ランウェイ」の伝説的編集長。発言ひとつで業界を動かすカリスマであり、仕事には非常に厳しい。アンディにも容赦なく無理難題を突きつける。
エミリー・チャールトン(エミリー・ブラント)
ミランダの第一アシスタント。ミランダに認められてパリコレに同行することを夢見ている。ファッションセンスのないアンドレアのことを見下している。
ナイジェル(スタンリー・トゥッチ)
ミランダの右腕であるファッションディレクター。ファッションに無頓着なアンドレアに呆れつつも、成長を見守り、ときに助ける存在。
ほかにも、主要キャラクターとしては下記の2人がいました。『プラダを着た悪魔2』ではどういった存在になっているのでしょうか。
ネイト (エイドリアン・グレニアー)
アンドレアの恋人。プロのシェフを目指して修行中。
クリスチャン・トンプソン(サイモン・ベイカー)
ベストセラー作家。アンドレアに興味を持ち、なにかとサポートする。
「プラダを着た悪魔」の脚本分析
創作に役立てたい場合、下記のポイントについてのチェックが欠かせません。『プラダを着た悪魔』についても、チェックしてみました。
- ログライン
- キャラクター設定
- 三幕構成
- 名シーン
「プラダを着た悪魔」のログライン
ログラインとは、「どんな映画なのか」を1~3行でまとめた大筋の説明のことです。作品の見どころやテーマを端的に示す、コンパクトなあらすじともいえます。
映画が魅力的であれば、ログラインにも自然と強い引きが生まれるといわれています。
※ログラインについて詳しくは「ログラインとは?書き方と名作映画のログラインを一覧で紹介 」の記事も参考にしてみてください。
「プラダを着た悪魔」のログラインの一例を挙げてみると下記の通りです。
『プラダを着た悪魔』のログライン
ファッションセンスゼロのジャーナリスト志望の女性が、悪魔のように厳しいカリスマ編集長のもとで働くことになり、華やかな業界の試練を通して自分の生き方を見つけ人生を切り拓いていく物語
このログラインから、下記のようなワクワク感が得られ、見たい!という気持ちも高まります。
- 一流ファッションの世界を楽しめる!
- 超プロフェッショナルな現場をのぞける!
- シンデレラストーリー的な展開が味わえる!
- “悪魔のような上司”との対決が楽しめる!
- 仕事や恋に悩む主人公に共感できる!
「プラダを着た悪魔」のキャラクター設定
名作と呼ばれる映画には、魅力的で立体的なキャラクターが登場することが多いといわれています。『プラダを着た悪魔』のキャラクター構成も、その一例といえるでしょう。
1)主人公の設定
主人公アンドレア・サックス(アン・ハサウェイ)のキャラクター設定を振り返ってみましょう。
アンドレア・サックス(アン・ハサウェイ)
長所:好奇心旺盛、前向き、行動力がある、素直、かしこい、思いやりがある
短所:ファッションセンスなし、ファッションを軽視している
Outer Goal(外面的欲求):ミランダのアシスタントとしての仕事をやり遂げる
Inner Need(内面的欲求):自分らしく働く
多くの人が惹きつけられる主人公のキャラクターには「憧れ」と「共感」の二面性があるといいます。
本作の主人公アンディの場合、憧れポイント(長所)は、前向きに困難を乗り越えるガッツと賢さ、共感ポイントは、「ダサい」「夢をまだかなえていない」という等身大の部分といえるのではないでしょうか。
また、映画やドラマでは、主人公が出来事に向き合い、葛藤し、成長していく姿が欠かせません。その成長には、
(1)外から見てわかる成長(Outer Goal)
(2)内面の変化(Inner Need)
の2つがあります。
外側の目標を設定することで物語の方向性が明確になり、内面の欲求が描かれることで物語に深みが生まれます。内面の動機は、物語を動かす“隠れたエンジン”であり、作品のテーマにもつながりといわれています。
本作の場合は、
Outer Goal:ミランダのアシスタントとして仕事をやり遂げる
Inner Need:自分らしく生きる(ジャーナリストになる)
という構造になっており、主人公アンドレアが、鬼編集長ミランダのアシスタントと働き、成長し、自分らしさを見つめ直す成長物語として描かれています。
2)副主人公たちの設定
『プラダを着た悪魔』は副主人公や脇役も魅力的です。
一般的には、主人公以外のキャラクターとして、Nemesis(敵)、Love Interest(恋人)、Mentor(助言者)、Sidekick(相棒)の4つが配置され、その関係性とともに主人公の成長が描かれていきます。
本作における、キャラクターの配置を挙げると次のようになります。
Nemesis(敵):ミランダ
Love Interest(恋人):ネイト
Mentor(助言者):ナイジェル
Sidekick(相棒):エミリー
敵はミランダで、敵と戦うことで主人公は成長していきます。
恋人は、ネイトで、メンターは、ナイジェルです。
サイドキックは、エミリーといったところでしょうか。
エミリーがアンディを見下しつつも、次第に認めていく関係性は、物語の魅力のひとつになっています。
「プラダを着た悪魔」の三幕構成と名シーン
三幕構成とは、映画脚本でよく見られる構成で、ストーリーを「設定(第1幕)」「対立・葛藤(第2幕)」「解決(第3幕)」の3つのパートに分ける技法です。視聴者を飽きさせずにストーリーに引きこむ技法といえます。
■三幕構成とは
三幕構成を、簡単に表すと下記のような展開になります。
■第一幕<ストーリーの発端>
第一幕はストーリーの発端で、状況設定のステージ。
主人公の置かれている状況や主人公がこれから向かう目標を明確にする。
■第二幕<ストーリーの中盤>
もともといた世界から、次のステージにうつり、主人公がひたすら課題と戦う一幕。
ここでは、新たなステージに移って浮かれ楽しんでいるところから、深い葛藤をせざるを得ない悪い状況へと下って行く流れが描かれる。
■第三幕<ストーリーの結末>
第三幕は、ストーリーの最終段階です。
最後の大きな難題が主人公の前に立ちはだかり、主人公の渾身の戦い、そしてその結末が描かれます。主人公は目標を達成して成長し、新しい世界が始まるイメージが描かれます。
三つに分けるだけでは、枠組みが大きすぎるため、ここでは、「SAVE THE CATの法則」のブレイク・スナイダー・ビート・シートを使って、分析していきます。
ブレイク・スナイダー・ビート・シートでは、下記のようなプロットポイントがあります。
■第一幕
1.オープニング・イメージ(1)
2.テーマの提示(5)
3.セットアップ(1~10)
4.きっかけ(12)
5.悩みのとき(12~15)
6.第一ターニングポイント(25)
■第二幕
7.サブプロット(30)
8.お楽しみ(30~55)
9.ミッド・ポイント(55)
10.迫りくる悪い奴ら(55~75)
11.すべてを失って
12.心の暗闇
13.第二ターニングポイント(85)
■第三幕
14.フィナーレ(85~110)
15.ファイナル・イメージ(110)
※()内の数字は110枚(110分)シナリオとした場合の×枚目(分目)の意味。
※三幕構成については、「三幕構成とは|おすすめ本とハリウッド式メソッドを紹介 - 創作の道具箱~物語作りのお役立ち情報~」、「SAVE THE CATの法則」については「ヒット作を書くためのバイブル!「Save the Catの法則」 - 創作の道具箱~物語作りのお役立ち情報~」の記事も参考にしてください。
■プラダを着た悪魔の三幕構成
プラダを着た悪魔の三幕構成は次の通りです。
展開ポイントごとに名シーンが繰り広げられています。
<第一幕:セットアップ>
>>オープニング・イメージ(1)
大学を卒業し、ジャーナリストを目指してNYで就職活動をしている地味目のアンディの姿と、ファッションモデルたちの姿が対象的に描かれる。
>>セットアップ
そのアンディはある出版社から声がかかり、面接を受けに行くとそこは一流ファッション誌「ランウェイ」の編集部だった。募集されていたのは、カリスマ編集長のミランダの第二アシスタントのポスト。それは何百万人もの人が憧れるポストで、「ミランダのもとで1年も働けばどこでも通用する人材になる」といわれていることもあり、なりたがる人材は後を絶たない。
しかし、アンディはミランダの名前すら知らず、ファッションに興味がないし、ファッションセンスもない。
そんなアンディを、ミランダの第一アシスタントのエミリーやディレクターのナイジェルやら他のスタッフたちは「ありえない」「対象外」だと白い目で見る。
だが、そこにミランダが現れ、ミランダの一存でアンディは採用される。
ここに名シーン!
鬼編集長のミランダが初登場するシーン。
ミランダが予定より早く出社することになり、ランウェイのオフィス中に緊張が走る。スタッフ一同、慌てふためいて一斉に仕事モードに切り替わり、ミランダを迎える。ミランダが、いかに恐れられている存在なのかがスピーディにコミカルに分かる場面です。
>>テーマの提示
採用が決まり、アンディは恋人のネイトと友人のリリーたちとで「憧れの仕事」と「家賃を稼ぐ仕事」について語りあう。アンディの夢はジャーナリスト、ネイトの夢は一流レストランのシェフ。
>>悩みのとき
採用された翌日の早朝から、アンディの過酷な日々が始まる。エミリーの下で、ミランダのコーヒーの手配、雑用にとこき使われる。
アンディは、ミランダの無茶ぶりにほとほと疲れ果てる日々。
そんなある日、出張先でハリケーンに遭い、飛行機が飛ばないから、飛行機をチャーターしろと命じられ、チャーターできずに、厳しい叱責を受け、心が折れそうになる。
>>第一ターニングポイント
そんなアンディは、ミランダの右腕でもある、ディレクターのナイジェルのもとに「努力しているのにミランダが認めてくれない」と泣き言を言いに行く。
だが、そんなアンディにナイジェルは、「君は何も努力していない」と突き放す。
ここに名シーン!
ナイジェルのセリフがアンディの甘えた考えに喝を入れる。
「アンディ いいかい キミは努力していない グチを並べてるだけだ。私にどうしろと?慰めてほしいのか?『いじめられてかわいそうに』甘えるなサイズ『6』。彼女は自分の仕事をしてる。君が働く雑誌は世紀のアーティストたちを掲載した。ホルストン、ラガーフェルド、デ・ラ・レンタ。彼らが想像したものは美術品より偉大だ。日々身にまとうから」
アンディは、ナイジェルの指摘で、自分の甘さに気づき、意識が変わる。
<第二幕:対立と葛藤>
>>お楽しみ
アンディはこれまでとは意識が異なり、ランウェイでの仕事をしっかりとこなそうとする。
アンディはナイジェルの選ぶファッションを身にまとい、別人のような装いになる。
ミランダの要求の先を読んで行動し、期待に応えるようになった。
ミランダからの信頼も得て、「アンドレア」「アンディ」と名前で呼ばれるようになる。
ここに名シーン!
アンディのオフィススタイルがガラリと変わっていく。
>>サブプロット
アンディは、憧れのベストセラー作家、クリスチャンと出会う。
クリスチャンはアンディを口説こうとする。
そんなある日、アンディは、立ち入ってはいけないと言われた場所に立ち入り、ミランダとミランダの夫との諍いの場面を見てしまう。その制裁として、ミランダから発売前の新刊「ハリーポッター」の原稿を娘たちのために手に入れろと、言いつけられる。
絶対絶命のアンディ。
さすがにもう辞めるしかないと追いつめられるも、アンディは、クリスチャンの存在を思い出し、クリスチャンの手を借りて、念願のハリーポッターの原稿を手に入れることに成功する。
>>ミッドポイント:一見すべてがうまくいって絶好調に
その後も、ミランダのもとで第一アシスタントのエミリー以上の活躍を見せるアンディ。
仕事の順調さと引き換えに、恋人のネイトとの時間を犠牲にしたせいもあって、ネイトとの関係がぎくしゃくする。
ここに名シーン!
ランウェイの撮影現場で「私生活の危機よ」とぼやくアンディに、ナイジェルは「私生活が崩壊し始めたら、昇進の時期だ」と返す。
>>すべてを失って
ミランダが突然、「パリ・コレクションにはエミリーでなくアンディを連れていく」と言い出した。
エミリーにとってパリ・コレクションに行くことが命より大事なこと。
それを知っているアンディは「エミリーを裏切れない」とミランダに訴えるもののミランダに「決めるのはあなたよ」と突き放される。
結局、エミリーに代わってパリ・コレクションに同行することになるアンディ。
さらに、パリ・コレクションに行くことでネイトともめて別れを告げられ、友人からの信頼も失ってしまう。
いつの間にか、ジャーナリストの夢も、恋人も親友も失うこととなってしまったアンディ。
パリ・コレクションにミランダのアシスタントとして同行するアンディは、同じくパリコレに来ていたクリスチャンと一夜を共にする。
そのクリスチャンから、ミランダには内密で、ランウェイの編集長がミランダからジャクリーヌに交代させられる計画が進んでいることを知らされる。
アンディはミランダに危機を知らせるためにパーティ前のミランダのもとに走る。
しかし、ミランダはその画策を知っていて、ナイジェルが内定していた新ブランドのパートナーの座にジャクリーヌを就任させることで、自身の編集長としての座を守ったのだった。
それはナイジェルに対するミランダの裏切り行為でもあった。
>>第二ターニングポイント
アンディは、ミランダに、ナイジェルへの裏切りについて責める。
しかし、ミランダは「あなたは私に似ている。同じ事をあなたもエミリーにやった」と言い、「『この世界』で生きるために必要な判断よ」と言い放つ。
そして、アンディは、『この世界』を望んでなかったことを思い出し、ミランダのもとを去るのだった。
<第三幕:ストーリーの結末>
>>フィナーレ
アンディはネイトに謝りに行き、ジャーナリストとして新しい出版社に就職面接を受けに行く。
アンディは面接の場で、ミランダが「アンディを雇わない者は大バカ者だ」という最高の誉め言葉を、面接官に伝えていたことを知る。
>>ファイナルシーン
ストーリーの余韻。心に残る下記のシーンで締めくくられます。
ここに名シーン!
無事、新聞社への就職が決まり、ミランダのオフィスにいるエミリーに電話するアンディ。
「エミリー? お願いがあるの。パリで着た服が山ほどあるの。着ていく場所もないから、もらってくれないかしら」
「困ったわ。すごく面倒なのよね。直さないとぶかぶかですもの。でももらってあげる。午後に取りにいかせるわ」とエミリー。
アンディの電話を切ったエミリーは、「前任者の『穴』は大きいのよ。肝に銘じて」と新たな第二アシスタントに言い聞かせるのだった。
ラストの名シーン!
ビル前で社用車の乗り込むミランダを見かけるアンディ。
ミランダと目が会い、会釈する。
ミランダはそれを無視して車に乗り込む。
だが、そのミランダは、車の中からアンディを見て、微笑む。
まとめ
名作「プラダを着た悪魔」のあらすじと概要、三幕構成を紹介しました。何回見ても楽しめる名作です。続編「プラダを着た悪魔2」を見る前に、ぜひもう一度、見直してみてはいかがでしょうか。