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映画分析 英語でシナリオ

映画「スポットライト 世紀のスクープ」の脚本分析(5)強烈で根深い問題であるほど淡々と…

前回までの映画「スポットライト 世紀のスクープ」の分析の続きです。

いよいよ映画のクライマックスである第三幕です。

いよいよ第三幕(終章)

特ダネを掴みながら、まだ報道できない。
もどかしい思いと悔しい思いのマイク、サーシャ、マット
ロビーにしても、昔の同級生、今は地元の名士となって成功している友人たちから「事件に触れるな。それが町のためだ」とくぎを刺される。「マーティはよそ者で、手柄を立てたいだけだから、おまえも相手にするな」と。

そうこうしているうちに、なんと、グローブ社が申し立てていた、封印解除の件が、通った。
証拠が手に入ると、マーティとベンがロビーを呼ぶ。
だが、ロビーとマイクらが、すでにその証拠を手にしていたことに、マーティとベンは驚く。
「すごい証拠だなぜ黙っていた」というベンに、「もう少し探りたい。この手紙だけで記事を書いても、枢機卿が謝罪してそれで終わりになるだけだ」とロビー。
そのとき、スポットライトチームはすでに70人の神父の情報を集めていた。

シーン155
MARTY
You have multiple sources confirming the 70 priests?
神父全員の名を二重に確認したか?

ROBBY
On some. I can get more.
何人かは


BEN
Too risky. If we’re not buttoned up on every single one of them,

the Church’ll pick us apart.

危険だ。どこかで漏れたら妨害される。


Robby’s up against it. He plays his hand.

ロビーは行き詰まる。彼は手持ちのカードを切る。

ROBBY
I think I can get someone from the other side of the aisle.
反対陣営に味方がいる。


BEN
Someone inside the Church?
教会内部に?


ROBBY
Yeah, a lawyer.
ああ。弁護士だ。


MARTY
Will he go on the record?
彼に確認させると?


ROBBY
Deep background. But he’s a solid source.
かなり深くて確実な情報源です。


Marty considers. A beat, then Ben steps in.
マーティは考える。少しして、ベンが踏みだした。

BEN
Rezendes needs time to write up the story. We don’t want to drop this
at Christmas, not after 9/11. We could run it just after New Year’s,
before the rest of the documents are released.
執筆はレゼンデス(マイク)に。クリスマスは避けたい。
掲載は年明けすぐ。証拠が公になる前に。


MARTY
Okay. Tell Canellos to bury the ruling in Metro.
いいだろう。(首都圏担当記者の)ピーターに記事は諦めろと。(※Canellosはピーターの名字)
(then, to Robby)
You’ve got six weeks.
(ロビーに)6週間やる。

引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から

【単語】aisle 通路

ロビー、反対陣営に味方がいる、というのは半分嘘。
友人で、教会側の弁護士をやっているジムは、「教会の件に関わるな」とロビーに苦言を呈していた。完全な味方とは言えない。でもなんとか説得するしかない。

考えさせられるラストシーン

さあ。記事のリリースまで、あと6週間。
クリスマスの讃美歌の練習をする聖歌隊の子供たちの姿。
スポットライトチームの取材と原稿執筆が進められていく。

そして、ロビーが、友人でもあり教会の弁護士でもあるジムに、スポットライトチームで調べた神父のリストについて、「確認してくれ」と見せる。
ジムは一度は「出ていけ!」とロビーを追い払うが、去っていくロビーを呼び止める。

(シーン163から)
JIM
You come to my home and lay this shit on me!
(then)
You’re right, Robby, we all knew something was going to on. So where were you? What took you so long?!

俺に喧嘩を売って、帰る気か!

……

お前の言うとおりだロビー。何かあると思っていた。

だがお前は? お前は何してた!?

引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から

「お前だって何もしなかったじゃないか」とロビーを責めつつ、リストを確認する、ジム。
スポットライトチームの調べたすべての神父が、クロだった。

教会の内部関係者のジムのおかげで裏が取れ、いよいよ、記事がリリースされることに。
マーティの局長室で、最後のチェック。

ベンたちが、教会の弁護士であるジムのことを「あんな汚い神父を弁護するなんて教会のダニだ」と責めていると、「俺たちはどうだ」ととがめる、ロビー。
グローブ社にも情報は集まっていた。サヴィアノ、そして弁護士のマクリーシュらの送ってきた資料もあったし、ガラベディアンがずっと教会を訴えていたことも知っていた。

実は、マクリーシュがかつて送ってきた20人の虐待神父のリストを首都圏ニュースの埋め草に使ったのはロビーだった。当時、引き継いで間もない時で、忙しく、書いたことすら記憶から消えていた。
「自分何もしなかった」と自戒するロビーに、マーティは言う。

シーン165
MARTY
Sometimes it’s easy to forget that we spend most of our time
stumbling around in the dark. Suddenly a light gets turned on,
and there’s fair share of blame to go around.

私たちは毎日、闇の中を手探りで歩いている。

そこに光が射して、初めて間違った道だと分かる。
(then)
I can’t speak to what happened before I arrived

but all of you have done some very good reporting here,
reporting that I believe is going to have an immediate and considerable
impact on our readers.

以前何があったか知らないが、君達全員、本当によくやってくれた

この記事は間違いなく多くの読者に大きな衝撃を与えるだろう。
(then)
For me, this kind of story is why we do this.
私たちの仕事はこうした記事を書くことだ。

引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から

【単語】fair share of the blame 当然非難されるべき

そしてとうとう記事がリリースされた。
世を揺るがすほどの反響。
リリースされた日のスポットライト編集部の電話は鳴りやまない。
ほとんどが被害者からだった。

その後も、スポットライトチームでは600本続報が出され、249人の神父が性的虐待で告発された。被害者の数は推定1000人以上。
ロウ枢機卿はボストン大司教を辞任。ローマのカトリック教会最高位の教会に転属。
この後も各都市の性的虐待が続々と明らかになっていく。

……大事件ですね。
大事件が淡々と描かれていく……骨太な作品でした。

最後、マイクが、ガラベディアンに掲載記事を届けに行くのですが、ガラベディアンは、新たな性的被害者の対応をしていた……事件はなおも続いていたことが示されます。

淡々としているのですが、描かれているものは強烈で根深い……

音楽もよかった。淡々としながら物悲しくもあり重厚でもあり…映画と同じ。

音楽:ハワード・ショア(Howard Shore)

あと、余談ですが、同じような大組織の陰謀とジャーナリストが戦う映画は「大統領の陰謀」(1976)と、「ペンタゴン・ぺーパーズ」(2017)がありますね。

(終わり)

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